ひとことで言えば、愛犬の命を託せるドッグリードが世の中になかったから、なのです。自分で作り始める前に使っていたドッグリードは大手アウトドア用品メーカーのものでした。誰でも知っている超一流メーカーです。リードと首輪をアウトレットで見つけ2本購入して愛用していました。「ザイル」という言葉が名前に入っていました。それまでのドッグリードよりも丈夫でした。しかし、1年ほどで最初のリードがだめになり、予備にと同じものを探したところ、すでに終売(T_T) アウトレットで販売されていたのは、おそらく処分品だったのです。私も長くメーカーにいましたから、そういう事情はよく分かります。「ペットブームだから、うちのブランドつければ売れるんじゃね」「あちゃー、全然売れないじゃん。やーめた!」ちと悪意がありますが、大体こんなところです。ザイルとは名前だけで、ザイル風ロープでした。それでも、他のドッグリードよりは長持ちしたのです。
それから、色々なドッグリードを試しました。どれもダメでした。だんだん、腹が立ってきました。あるものはブランド名もない中国製、あるものはおしゃれだけれど強度不足、フレキシリードも試しましたが犬のことも道を通る人のことも考えていないただのアイデアグッズでした。高価な革製のリードにも魅力がありましたが、高すぎるし、くろまるは噛んでしまう。結局、犬と飼い主と通行する人のことを考えて作られていないのです。犬のリードに安全性なんて要らない、安ければ買ってくれる、血統書付きの犬には高級感のある革製!というリードばかりなのです。
それで、アウトドアショップに行って切り売りされているザイルロープを購入し、とりあえず、その時使っていたなんちゃってザイルリードのコピーを作り始めました。一番難しかったのは縫製です。熱溶着も試しましたが強度不足。ふと、思いついて靴を作っている靴屋さんにお願いしました。1本だけ縫ってくれましたが、それ1本しか縫ってもらえませんでした。(その上、強度不足)仕方がない。自分で縫うしかないかないかということで、和歌山県の中古ミシンレンタル業の会社に問い合わせたところ、どういうものを縫製したいのかと尋ねられ、説明したところ、とりあえず試すから現物を送ってくれといわれ、送ったところ、閂(かんぬき)ミシンで縫製してくれたのです。ただ、工業用ミシンなので、レンタル費用が高いのが悩み。そこの社長と電話で話していると、閂ミシンはデニム縫製によく使われると聞きました。それで、デニム縫製でネット検索したところ、自宅から30分ほど離れたところにデニムを専門とする縫製工場を見つけ、ダメもとで訪問したところ、お金をいただいてまで請け負う仕事ではないので、ミシンを貸すので工場に来て自分で縫っていい、ということになりました。
そして完成したのが画像のようなリード。基本的にはなっちゃってザイルリードのコピーです。
そのころには最初に購入したザイルロープは使い切っていたので、どうせならということでフランス製のザイルロープを購入して作成しました。なんちゃってザイルロープに使われていた金属パーツと同じパーツを探しましたが、どこにもないので、小型の旋盤まで購入しました。
「自分がこんなに苦労したのだから、欲しい人もいるだろう」「1本のリードを作るのにこんなに投資してしまったから、販売して回収したい」ということでアマゾンのマーケットプレイスで販売を始めたのです。
私はくろまるのしつけに失敗したと思っています。でも、くろまるがどんなにヤンチャでも可愛くて仕方がありませんでした。そして、そんなくろまるを家の外に出してあげるために丈夫なリードが必要だったのです。どんなに、犬が好き、大切な家族です、犬の放棄や殺処分は許せない、という方でも使っているリードを見れば、犬への愛情が本物かどうかはわかります。犬と飼い主にとってドッグリードはまさに命綱なのです。
ザイルリードはこの9年間でなんちゃってザイルリードのコピーから、大きく進化しました。製造方法も大きく変えました。すべては、正しいドッグリードを提供するため、人と暮らす全ての犬が幸せに一生を全うできるようにしたいためです。
2以降に続く…