加工した繊維を最後に切り落とすという決断

ザイルロープの強度を維持できる縫製は閂(かんぬき)縫製しかありません。それは市販のスリングの輪がダイニーマの22kNという強度を維持するためにザイルリードと同じ縫製方法を採用していることからも確認できます。

従来のザイルリードでは縫製した部分をどうきれいに処理するかを考えてきました。最初のバージョンではシリコンチューブを被せ、次のバージョンでは黒い熱収縮チューブを被せていました。しかし、どちらの方法でも被せたチューブから劣化が始まってしまう。ロープと縫製部分が強すぎるためでもあります。

そこで、クラウドファンディングで提案したザイルリードでは縫製部分をそのままにするという仕様にしました。縫製部分を隠さない方法なので、縫製糸の処理作業は大変なのですが、丁寧に処理すれば、もっとも美しく仕上がります。

ただ、再開に向けて試作したリードをモニターしてくれた方から、縫い合わせた部分が硬くて不快感があると指摘されました。確かにロープの切断はホットカッターで熱処理していますので、溶けた繊維が硬くなります。私はポリアミドという化学繊維で作られたザイルロープなので、強度を維持するためには仕方のない部分と思い込んでいたので、その指摘は衝撃でした。

しかし、過去に何度かチョーク一体型のドッグリードに挑戦しながら断念したのは、接合部分の硬化した繊維が金属パーツにひっかかったり、ワンちゃんの首を傷つける懸念があったためです。

そこで、様々な接合部分の処理方法を試しました。結果は仕上げ段階で硬化した部分を断裁するという方法になりました。一番不安だったのは見た目は「処理していない」ように見えてしまうこと。

でも、硬化した繊維を断裁した後の繊維のフワフワな感触は何よりも魅力でした。それに、金属パーツとの接点も滑らかになり、ワンちゃんの首にもやさしく、チョーク一体型やハーフチョーク首輪も問題なく製造できます。

これが接合処理方法を変更した理由です。旧バージョンのザイルリードを使っていただいた方には多分びっくりするほどの手触りの違いだと思います。

是非、一度経験していただきたいと思います。

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